古賀春江(1895–1933、日本)
世界を組み替える人 ― 近代のコラージュとしての幻想
古賀春江の絵画を見ていると、不思議な感覚に襲われる。
そこには海があり、飛行機があり、都市があり、機械があり、女性の身体がある。しかしそれらは現実の風景として描かれているわけではない。異なる場所や時間に属するものたちが、一枚の画面の中で自然に共存しているのである。

シュルレアリスムの影響を受けた画家として語られることも多いが、古賀の作品はヨーロッパのシュルレアリストたちとは少し異なる。
アンドレ・マッソンやマックス・エルンストが無意識や偶然性に関心を向けたのに対し、古賀はむしろ「新しい世界の見え方」に興味を持っていたように見える。
彼が生きた1920〜30年代は、飛行機、映画、広告、雑誌写真、無線通信といった新しいメディアが次々と登場した時代だった。人々はそれまで出会うことのなかった風景や情報を同時に目にするようになる。世界は急速に拡大し、遠く離れたもの同士が結びつき始めていた。

古賀の画面に現れる奇妙な組み合わせは、その感覚を反映している。
海と都市。
人体と機械。
自然とテクノロジー。
それらは対立するものではなく、一つの世界の中で接続されている。

代表作《海》では、さまざまなイメージが複雑に重なり合いながらも、不思議な統一感を保っている。そこには夢の論理というより、近代そのものが持つ情報の洪水がある。異なる断片が次々と接続され、新しい現実が組み立てられていくのである。

その意味で古賀春江は、日本におけるシュルレアリスムの受容者というより、日本におけるイメージ文化の先駆者だったのかもしれない。
彼の関心は無意識の深層を掘り下げることではなく、異なる世界同士を接続することにあった。そしてその接続から生まれる不思議な光景こそが、彼の幻想だった。
後の怪獣やSF、マンガやアニメに登場する数多くの異世界もまた、まったく存在しないものから生まれたわけではない。さまざまな断片を組み合わせ、新しい世界を構想する想像力から生まれている。

古賀春江の絵画には、その原型のひとつを見ることができる。
彼は皿に「飛行機」と「海」、「機械」と「身体」をコラージュのように盛ったのだ。
そしてその取り合わせによって、まだ誰も見たことのない世界を組み替えていたのである。


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