再び盛りつけられるカツカレー
第一次世界大戦の終結は、単なる戦争の終わりではなく、世界の構造そのものの再編を意味していた。帝国は解体され、国境は引き直され、国家の枠組みや社会制度は大きく変容する。大量生産と機械化はさらに進展し、鉄道や自動車、航空機の発達は人と物の移動を加速させた。


都市は拡張し、大衆社会と新たな消費文化が形成されていく。人々はかつてない規模で移動し、亡命や離散を経験しながら、新しい現実に直面した。

この激動の時代において、従来の価値観や秩序は決定的に揺らいだ。世界はもはや、ひとつの統一された視点によって理解されるものではなくなったのである。構造が崩れたあと、世界は単純に混乱へと沈んだわけではなかった。

むしろ画家たちは、その不安定な状態を前提として、新しい秩序を探り始める。
もはやかつてのように、ひとつの視点から世界を統一することはできない。しかし完全な断絶のままでは、像そのものが成立しない。そこで試みられたのは、崩れた要素をもう一度つなぎ直し、別のかたちで成立させることである。

それは、かつての秩序への回帰ではない。むしろ、断片化された世界を前提とした、新しい配置の方法だった。
20世紀前半、芸術は大きく二つの方向へと展開していく。
ひとつは、形や色を単純化し、強い秩序として再構成する方向。
もうひとつは、記憶や夢、内面のイメージを組み合わせ、別の現実を立ち上げる方向である。
前者においては、色彩や形態は解体されたあと、より純粋な要素として扱われる。
後者においては、断片はそのままの状態で結びつき、論理とは異なる関係をつくり出す。
いずれの場合も重要なのは、混成がもはや外部から持ち込まれるものではなく、
内側から自然に立ち上がるものへと変化している点である。
たとえば、色と形を大胆に単純化し、強い平面性の中で画面を再構成した アンリ・マティス。
彼の絵画では、解体された要素は不安定なままではなく、明快で調和のとれた関係として再び組み直される。

一方で、線や色、記号のような要素を用い、画面の中にリズムや構造を与えた パウル・クレー。
彼は断片をつなぎ合わせることで、まるで音楽のように流れる秩序を生み出した。

そして、現実と夢、記憶と物語を重ね合わせ、個人的なイメージの世界を構築した マルク・シャガール。
そこでは異なる時間や場所が自然に共存し、論理ではなく感覚によってひとつの像が成立している。

彼らの試みは一見すると穏やかで、再び安定が取り戻されたようにも見える。
しかしその内側では、世界はもはや一度も元には戻っていない。秩序は与えられるものではなく、つくり直されるものへと変わっている。
ここでの絵画は、世界を再現するものではない。
また、単に壊すものでもない。
断片を引き受けながら、それでもなお成立する像を探し続ける行為である。

整えられたカツカレーが崩れたあと、それはもはや元のかたちには戻らない。しかし人は、崩れたままの素材を前にして、もう一度、それを皿の上に並べ直そうとする。ただしその配置は、かつての秩序とは異なる。より自由で、より主観的で、そしてどこか不安定さを残したままの秩序である。

こうして絵画は、壊れた世界の中で、なお成立しうる関係を探る装置となっていく。
それは、混ざり合ったものを整理する段階を越え、崩れたものを引き受けながら、新しく組み直す段階である。


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