混ぜすぎた美術史 23 ~アルフォンス・ミュシャ

アート

アルフォンス・ミュシャ(1860–1939、チェコ)

装飾として広がり、起源へと向かうイメージ

アルフォンス・ミュシャは、19世紀末から20世紀初頭にかけて活躍した画家・デザイナーである。
彼はアール・ヌーヴォーを代表する存在として、ポスターや装飾の分野で広く知られている。

ミュシャの特徴は、絵画を特別なものとして閉じるのではなく、流通するイメージとして開いたことにある。

出典:Artpedia/アルフォンス・ミュシャ「ジスモンダ」

パリで制作されたポスターは、劇場や街頭に貼られ、美は日常の中へと拡散していった。

そこでは女性像、植物の曲線、装飾的な枠組み、文字が、ひとつの統一された様式として組み合わされている。

この様式には、日本の浮世絵に由来する平面性や輪郭線、装飾的な配置の感覚が強く影響している。

出典:Artpedia/アルフォンス・ミュシャ「JOB」(たばこのポスター)

いわゆるジャポニズムを経由した視覚の変化は、ミュシャの中で滑らかな装飾として再構成され、それがさらにポスターという形で大量に複製されていく。ここで起きているのは、単なる影響関係ではない。異なる文化の要素が、衝突することなく、様式として統一され、流通可能なイメージへと変換されているのである。

そしてこの流れは、日本にも逆流する。輸出された浮世絵がヨーロッパで再解釈され、ミュシャの装飾として整えられ、それが再び日本の漫画やデザインに影響を与えていく。

出典:Artpedia/北野恒富「神戸湊川貿易製品共進会」
出典:Artpedia/山岸涼子「アラベスク」

イメージは一方向に伝わるのではなく、往復しながら形を変え、増幅されていく。

しかしミュシャの仕事は、そこでは終わらない。

出典:Artpedia/アルフォンス・ミュシャ「スラヴ叙事詩」

晩年に彼が取り組んだ《スラヴ叙事詩》では、これまでに獲得した装飾的な語彙を用いながら、スラヴ民族の歴史や神話が大きなスケールで描かれる。

出典:Artpedia/アルフォンス・ミュシャ「スラヴ叙事詩」

流通し、洗練され、様式化されたイメージは、ここで再び、起源や共同体へと向かうのである。

それは単なる回帰ではない。

一度混成され、整えられた視覚を通して、新たに構成された「起源」のイメージである。

出典:Artpedia/アルフォンス・ミュシャ「スラヴ叙事詩」

ミュシャの仕事は、装飾として広がるイメージと、民族的な物語とを、同時に成立させている。

それらは対立するものではなく、むしろ同じ構造の中に置かれている。 彼はひとつの皿に、装飾と民族を盛ったのだ。

出典:Artpedia/アルフォンス・ミュシャ「スラヴ叙事詩」

カツカレーカルチャリズム画家列伝17 ~ミュシャ 編 | それいけ!カツカレーカルチャリズムマシーン ~思考と余剰を駆動する美術史ブログ

出典:Artpedia/アルフォンス・ミュシャ「スラヴ叙事詩」

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